【クルマ】レースの伝統と安全

11/15(木)~18(日)に第65回マカオGPが開催されました。

中国のマカオ市街地に設けられたギア・サーキットで開催されるマカオGPですが、中でもイギリスやヨーロッパ、日本などで開催されているF3シリーズの上位ドライバーによって競われるF3レースはF1への登竜門として知られています。

実際、F3のレースが開催されるようになった1983年以降の勝者には
 1983年 アイルトン・セナ(1988、1990、1991年F1チャンピオン)
 1990年 ミハエル・シューマッハ(1994、1995、 2000~2004年F1チャンピオン)
 1991年 デビッド・クルサード(F1で13勝)
 1993年 ヨルグ・ミュラー(BMWワークスドライバー)
 1995年 ラルフ・シューマッハ(ミハエルの弟、F1で6勝)
 1996年 ラルフ・ファーマン(2007年SUPER GTチャンピオン)
 2000年 アンドレ・クート(2015年SUPER GTチャンピオン)
 2001年 佐藤琢磨(2017年インディ500優勝)
 2003年 ニコラ・ラピエール(2012~2014、2017年にトヨタからル・マン24h参戦、2014年3位)
 2006年 マイク・コンウェイ(2016~1018年にトヨタからル・マン24h参戦、2016、2018年2位)
 2007年 オリバー・ジャービス(2012~2016年にアウディからル・マン24h参戦、2012、2013、2016年3位)
らがいます。

一方、マカオGPが開催されるギア・サーキットは市街地サーキット故にランオフエリアがほとんど無く、コースの一歩外はガードレールになっています。また、コース幅も非常に狭く、昨年のGTのレースではクラッシュした車両がコースを塞いでしまい、20台中無事に通過できたのは4台だけ。他に後方で足止めされた車が4台。つまり、12台がクラッシュに巻き込まれてしまい、マシンを回収するための車両も不足する事態となりました。

そんなマカオGPで今年も大きなクラッシュが発生してしまいました。
クラッシュが発生したのは11/18(日)に行われたF3決勝レースの5周目、高速コーナーを2つ挟んだ直線の先にあるリスボアのコーナーでした。
詳細な状況はなかなか伝わってきませんが、細切れのニュース記事とインターネット上に上げられた動画などから推測すると、リスボアの手前でソフィア・フローシュ選手がユアン・ダルバラ選手と接触してスピン。270km/h以上のスピードで180度マシンが回って前後が入れ替わってしまったため、マシンが宙に浮いた状態でコース上を滑空することになってしまいました。
F3を初めとしたフォーミュラカーは主に前後のウイングでマシンを地面に押しつけています。しかし、それが前後反転してしまうと浮力が発生し、あっという間に浮き上がってしまいます。ANAのサイトによると、飛行機の離陸速度は240~300km/hとのことですので、もし最高速のままスピンしたとすると、飛行機の離陸速度と同じぐらいの速度が出ていたことになります。

コースの上を滑空するソフィア・フローシュ選手のマシンですが、リスボア・コーナーの入口で坪井翔選手のマシンの上部に接触。さらに高度を上げてリスボア・コーナーのアウト側にあるキャッチフェンスを突き破り、その先にあるカメラマン用の仮設スタンドに後部から突き刺さる形でようやく止まりました。
一時はリスボア・コーナーの先にあるリスボア・ホテルの建物に当たったのではないかという情報もありましたが、幸いその手前で止まったようです。
ソフィア・フローシュ選手は脊椎骨折の重傷ですが、意識はあり、生命に別状はないそうです。

まず、私が不幸中の幸いだと思ったのは2点。
1つめはリスボアの入口で坪井翔選手のマシン上部に当たって高度が上がったこと。坪井翔選手のマシンと当たらずにあの高さのまま滑空すると、ガードレールに直撃していたと思われます。柔らかいキャッチフェンスに当たり、仮設スタンドに当たったことで衝突時のGが随分下がったのではないかと思います。
坪井翔選手にとっては、見えないところからいきなりマシンが飛んできてクラッシュすることになってしまいましたし、マーシャル1名と報道関係者2名がケガをすることになってしまいましたが、ソフィア・フローシュ選手にとっては幸運だったと思われます。

2つめは後部からリスボア・コーナーに突っ込んだことです。
マシンの前後が反転してしまったことでマシンが宙に浮いてしまったのかも知れませんが、あのスピードでフロントからクラッシュしたとしたら、脚に大きなケガを負っていたと思います。
事故後の映像を見るとマシンの後部はかなり壊れています。現在のマシンは丈夫にできているとは言え、あの細いノーズではとてもじゃないですが…

現在キャッチしている情報では、坪井翔選手は腰に痛みを訴えていて要観察。ケガをしたマーシャルの方は上顎骨折等だそうです。

今年は死者こそ出さなかったものの、昨年は1名、2012年には2名の死者が出ています。
F1モナコGPも同じですが、伝統のあるレース、コースというのは様々な問題を抱えています。
今年もF1モナコGPの際に、レースをリタイアしたフェルナンド・アロンソ選手が、「抜けないモンテカルロ市街地はあまりにも退屈」という旨の発言をして物議を醸しました。
確かに現実はそうかも知れませんが、だからといって真っ向から否定するのはプロフェッショナルではないと思います。
伝統というものは途切れさせたらお終いです。どうやったら今後も存続させられるのかを考えなければ伝統が廃れてしまうと思うんですよね。
フェルナンド・アロンソ選手にしても、元F1世界チャンピオンとして世界3大レースの1つであるF1モナコGPの伝統を築く一員となったわけですから、どうすればより盛り上がるレースになるかという観点に立てないのかなぁと残念に思いました(モナコでも2勝しているのだから、モナコGPの伝統や名誉といったものは十分に理解していると思うのですが…)。
開催し続けるか、やめるかの2択ではなく、どうすれば継続できるかといった前向きな議論を進めて欲しいですね。

マカオGPにしても、安全性に問題があるから中止というわけではなく、存続させるためにはどうすれば良いかという観点で進めて欲しいですよね。
ただ、マカオGPに関しては常に安全性向上に取り組んだ結果なので、抜本的な改革が必用かも知れません。

今回事故があった地点をGoogle Mapで見ると、3車線あるストレートから直角に曲がり、曲がった先は2車線になっています。しかも、コーナーの出口はタイヤバリアなどでさらに狭くなっていて、ボディサイズが小さいF3のマシンでも2台が並んで通過するのは不可能に近い状況です。
このリスボア・コーナーの先は上下合わせて4車線あるのですが、中央分離帯があるために2車線しか使うことができません。
GPのために道路の改修まで手を入れるのか、その他の方法を探るのか…

また、今回ソフィア・フローシュのマシンが突き破ったリスボア・コーナー外側のキャッチフェンスですが、事故の画像を見る限りほとんどマシンの速度を落とすことができていないようです。
おそらく、クラッシュによって飛び散ったタイヤやパーツを受け止めるためのフェンスなのでしょうが、今回のようなクラッシュに対するのであれば、もう少し強度をあげる必用がありそうですね。


さて、好き勝手なことを言ってきましたが、今年、伝統を打ち破って安全性を格段に向上させたものがあります。
それが、F1を初めとしたフォーミュラカーで採用された「Halo(ヘイロー)」です。


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HALOとは、コックピットの前方にピラーを立て、そこから頭部斜め後方まで伸びる馬蹄型のフレームがドライバーの頭部を保護するというものです。
クラッシュなどによって飛散したマシンのパーツやタイヤの直撃からドライバーの頭部を守ることが目的ですが、導入時は見た目が大きく変わることもあり、否定的な意見が多く出ました。
しかし、野球でよく「守備が変わったところにボールが飛ぶ」と言われるように(?)、今年からHALOを導入したF1やF2では、HALOが無ければあわやといった事故が多発しました。

このHALOは2019年からは国内レースでもスーパーフォーミュラで導入される予定ですし、国内F3についてもまだ導入するかどうかの決定は成されていませんが、今後導入される可能性は十分にあります。
海外に目を向ければ、「F3アメリカシリーズ」では今年からF3シリーズで初めてHALOが導入されていると聞きます。
また、内燃機関を廃した、つまり電気自動車によって争われるフォーミュラ-Eの2018年-19年シーズンのマシンでもHALOが導入されることになっています。

HALOについては、私自身「格好悪い」と思っていましたが、今では安全面やその効果を見ると無くてはならないデバイスなのだと思っています。
導入当時にメディアを通じてブーブー文句を言っていたのも、デザイナーや引退したドライバーが中心でした。現役のドライバーの中にもHALOについて懐疑的な意見を持っている人は沢山いるようですが、HALOによって命を救われたドライバーにしてみれば、HALOが撤去されたマシンなどもう乗れないでしょうね。
私自身、自分がいかに無責任だったかと反省しています。

もちろん、HALOは万能ではなく、タイヤのような大きな部品が飛んできた場合は防ぐことができますが、小さくて鋭いカーボンパーツなどが飛んできた場合には隙間を通り抜けることは十分にあり得ます。
しかし、安全性が高まったことは確かな事実です。
HALOを着けるか外すかの2択ではなく、今後はF1マシンの美しいデザインにいかにマッチさせていくのかといった話や、より安全性を高める方法について改善を続けてくれたらなと思います。





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